Product driven organization

プロダクトは分かってそうでいて、スタートアップをやればやるほど、実は全然分かっていないということを実感させてくれる領域だ。
恐らくYCが流行り始めてきたことから、プロダクトの重要性が強調されるようになり、プロダクトマネジャーという職種が台頭してきた。僕が中国で起業していたころは、少なくとも中国と日本では所謂プロダクトドリブンの組織は殆ど存在しなかったと思う(一部の例外は、Baiduやテンセント)。故に、米国のビジネススクールに来てから、プロダクトマネジャーの人気度合いに驚いたものだ。投資銀行、コンサルと並ぶほど、テックカンパニーでのプロダクトマネジャーは人気が熱い。なぜなら、米国で成功しているテックカンパニーの殆どはすでにプロダクトドリブンの組織なっていて、プロダクト出身の人が出世し、あるいはスタートアップを作って成功している事例が多数あるからだ。
では、プロダクトドリブンとはどういうことで、なぜそれが重要なのか。
一般的なスタートアップは、プロダクトがないところからスタートする。まずはプロトタイプを作るわけだが、誰がどういう風に使ってくれるか(Use Case)がわからないので、色々とインタビューして、パイロットとかやったりする。それで復元可能かつ市場が大きいUse Caseに焦点を当てて、プロダクトをどんどん進化させていくことで、Recurring Revenueを伸ばしていく。これが一般的なスタートアップの成長の仕方で、特にSaaS系の会社はほとんどがそうだ。極端に言うと、初期の頃はクライアントインタビューとプロダクト開発しかやらないのが、YCの哲学である。
プロダクトドリブンが何故難しいのか。売上が一億くらい超えてくると、売っているプロダクトは何かしらの需要があるということが分かってくる。勿論そのプロダクトが最適解である可能性は低いが、とりあえず何かしらのユーズケースは発見しているということだ。売上が一億円を超えてくると、いろんなクライアントがカスタマイゼーションを要求してくる。特にB2Bだと、著名で先進的なクライアントほどそういう傾向が強い。そうするとスタートアップは舞い上がってしまい、契約が取れるのであれば、何でもやりますと二つ返事をしてしまう傾向がある。その結果最初は一個しかなかったプロダクトが徐々に増えてきて、やがては各クライアントが使うプロダクトが全く違うものになってくる。これがクライアントドリブンの典型的な症状だ。
カスタムされたプロダクトはスケールもしないし、リピートもしないので、バリエーションは低い。プロダクトが分散してくると、それぞれのプロダクトの質が下がるし、エンジニアの納期も遅れがちになる。特にロードマップがクライアントに左右されると、エンジニアリングチームの生産性は一気に下る。じゃあ、プロダクトを一本に絞ればいいじゃないかという話になるのだが、初期のスタートアップは、大体創業者・ビジネスオーナーがプロダクトの決定をしているので、売上を上げるためにどうしてもクライアントの要求を優先してしまう。実際体験してみるとわかるが、クライアントの要求を断って、売上を下げる決断をするのは容易ではない。特にスタートアップのキャッシュポジションが少なく、自分がそのクライアントを担当している場合だ。
これを解決するには、プロダクトマネジャーが、プロダクトの仕様とロードマップを決めるように組織を作り変える必要がある。プロダクトマネジャーが営業と開発の双方の意見を聞き、自らクライアントのフィードバックをもとに、プロダクトのロードマップを決める。そして、よっぽどのことがない限り、一旦決めたロードマップはその四半期の間は変更しない。これが難しいのは、プロダクトマネジャーはだいたい10人以上の組織になってから採用する業種で、その前に営業と開発の古株がいることである。さらにCEOが営業隊長を兼任している場合も少なくない。となると、プロダクトマネジャーは先輩や上司の意見と異なることをいうことが、半分仕事になるので、強い意志がないとなかなか務まらない職種になる。なによりも重要なのは、プロダクトが中心となって、ロードマップを決めるカルチャーを、リーダーシップチームが醸成することだ。
難しいのは、いつプロダクトドリブンの組織に移行するか。初期のころは、PDCAを迅速に回すのが必要なので、プロダクトの強調しすぎると却って回り道になる。だが、現状的には、プロダクトドリブンの組織への移行が遅れたケースがほとんどではないだろうか。
スタートアップの定義するのは、究極的にはGrowthであり、そのGrowthを支えるのは、強いProductである。スケールできるプロダクトがない限り、スタートアップは急速に成長しない。逆説的にいうと、プロダクトはスタートアップ(テックカンパニー)にとっては極めて重要だが、他の業界ではそうでもないということだ。
最近日本でもじわじわと広がってきたプロダクトマネジャーという職種。プロダクトドリブンの組織で、世界を目指すスタートアップが増えることを祈る。

Evolution of the management team

今日の午後にMITでSTEX25の定例会に出席した。月に一回、MIT出身のファンダーが集まっていろんな課題を話すわけだが、今日はあるファンダーが初期に採用した経営メンバーの処遇について皆に意見を求めていた。
彼女の話を要約すると、チームが20人近くになり、正式なレポーティングラインを作り始めたら、初期に採用したコアメンバーの一部が今後の組織に成長にマッチしないことが判明した。どうするべきなのか。
我々も数回似たような課題に直面してきたので、恐らくこれはスタートアップにおいて、かなりの頻度で出現する課題なのだろう。選択肢は2つしかない。
1. そのメンバーを解雇し、新しいメンバーを採用する
2. そのメンバーの上に誰か採用し、彼もしくは彼女の守備範囲を狭める
何れとも難しい会話になることは確実だ。一般的な流れとしてはオプション2を目指すが、そのメンバーのモチベーションが下がり、自分からやめてしまうパターン。しかしこのパターンだと組織がゴタゴタした状態が数ヶ月続くので、こうなるとわかっていたらまだオプション1を取ったほうがよい。
うまく成長しているスタートアップは、確実に個々人の成長よりも早く成長する。スタートアップは組織であり、人材の集合体はお互いにシナジーを生み出し、個々人を超えたものを作り出す。我々生身の人間の成長なあくまで線形にしか伸びないが、組織の成長は指数関数的に実現する。故に、このような経営チームの世代交代というのはほぼ避けられない。だとすると、採用した瞬間からこういった世代交代を念頭に、給与やストックオプションの設計、評価制度・コミュニケーションを作っておかないといけない。
この原則に唯一当てはまらないのが、ファンダーである。なぜならファンダーはビジョンを作り、それを伝導する人間であり、ビジョンは思いつく限りいくらでも拡張できる。一方経験やスキルセットの拡張には限界がある。なので、ファンダーは自分よりも遥かに経験のある経営メンバーを採用できるのである。
先週久しぶりにUSVのFred Wilsonと会ったが、彼が過去にこのトピックに関して、とてもよいブログ記事を書いたので、最後に紹介しておきたい

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